Flukten ノルウェー

Velkommen Håp


Flukten

All photos by Bjørn Opsahl.

Flukten(フルクテン)は、2020年3月の新型コロナウイルスのパンデミックの封鎖中に、4人のミュージシャンがその場で一緒に音楽を創ることだけをテーマとして結成された。パンデミックの憂鬱な環境から逃れるために、彼らなりの「聖なる音楽の場」を立ち上げた有望なノルウェー人ミュージシャンの集合体である。そうした状況下で結成されたことから、バンド名は「脱出」、そしてアルバムタイトルも「希望を求めて」という非常にシンプルこの上ないコンセプトとなっている。

Flukten

メンバーを見ていくと、サックス奏者ハンナ・パウルスバルグ (ハンナ・パウルスバルグ・コンセプト、ガールズ)、ギタリストのマリウス・ハルト・クロブニング (ハリボー、スカデディール)、ダブルベース&エレキベース奏者のバル―・ライナート・ポウルセン(エスペン・バルグ・トリオ、ワコ) とドラマーのハンス・ハルベックモ (アトミック、ハンナ・パウルスバルグ・コンセプト、モスクス、スカデディール) が揃った。過去にギタリストのマリウス以外は現地などで直接プレイを聴いたことがあり、紛れもなくノルウェーの比較的若い世代の第一線で活動する精鋭ミュージシャンによる質の高いジャムバンドとも言え、その優れたパフォーマンスが確実に化学反応を起こしたアルバムである。

アルバムカバーの意味深で挑発的なアートが示すように(ちなみに股から見えているのはトラウト、鱒です)、より自由で解放的な方向性を求め、希望を持って歩んでいこうというポジティブなメッセージをぶつけたサウンドが聴いて取れる。

オスロで定評のあるプロペラ・スタジオで結成一年足らずのうちにレコーディングされた収録曲10曲の主な作曲はドラマーのハンス・ハルベックモによるものであり、ドラマーならではの特徴がいかんなく発揮されている。それは、ブルース、ラテン、ヒップホップなど多様なリズムのエッセンスが独自の解釈によって組み込まれた楽曲で、なおかつ長年ともに演奏してきたお互いのプレイの持ち味を生かした秀逸なアレンジとなっているのも注目すべき点である。ただ、これはこのレコーディング時のアレンジであり、ライブでは如何様にもフォームを変えていき、一度として同じアレンジやニュアンスでのパフォーマンス再現できないことが容易に想像できる。

フルクテンの多様に展開するストーリー性のある楽曲を繰り返し通して聴いていくと、どこか映画のサウンドトラックの断片のような素材や要素としても捉えることができることに気が付く。それは、爆発的なパワーのあるフュージョン、遊び心のあるテーマやユーモア溢れるモチーフ、憂いのある雰囲気のバラード、ブルージーな空気感など、楽曲をどの部分で切り取っても映画のワンシーンのような様々な風景(場面)を映し出しているかのようでもある。

Flukten
左よりハンス(ds)、バル―(b)、マリウス(g)、ハンナ(ts)

パウルスバルグの即興の豊富なテクニックと音色を微妙に変えていくサックスの醍醐味を味わえ、エフェクターを駆使し渇いたエッジの利いたクロヴニングのギターが楽曲を牽引し、ポウルセンとハルベックモによる変幻自在のリズムアレンジが躍動するパフォーマンスを基盤とする。あくまで即興を第一にし、既存の演奏方法に捉われないのが多くのノルウェー人アーティストにも見られる傾向である。そして何よりもこのグループのサウンド面での最大の特徴は、聴覚的に圧倒的なダイナミズムのある倍音にあるといってもいいだろう。パンデミックが収まる現在、今後グループの方向性がどのように変貌していくか、その際限のない可能性に注目したいグループがコロナ禍に新たに生まれた。

Flukten
Hanna Paulsberg (tenor saxophone)
Marius Hirth Klovning (guitar)
Bárður Reinert Poulsen (double bass, electric bass)
Hans Hulbækmo (drums)

特集アルバム
Flukten

Velkommen Håp 
(Odin Records, 2021)

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