The Wild East

Jupiter   スウェーデン

Words by JazzProbe

20 年前にノルウェー・トロンハイムで結成されたJupiter。当初オルガンジャズ・トリオとしてのデビュ ーアルバム「Ignition」(2004)は、そのジャケットからは想像のできない正統派のオルガン・ジャズと して日本でも注目を集めた。続く2 枚目がストックホルムの人気クラブでライブ録音された「Live at Glenn Miller Cafe」(2006)は、スウェーデンを代表するサックス奏者ヨーナス・クルハマーがゲストと して参加し、クオリティの高いライブ・パフォーマンスが好評を得た。その後、クルハマーがレギュラー メンバーとして参加した2枚組CDの「III2」(2007)では、トリオに新たなエッセンスを加えたサウン ドを存分に堪能できる内容になっている。さらに「Alantis」(2010)をリリース後の2015 年には、中国 ツアーを成功させている。そして、今回新たにスウェーデンの人気グループ、ゴラン・カイフェス・サブ トロピック・アーケストラ等で活動するドラマー、ヨハン・ホルムガードを迎え、新生Jupiter の12 年ぶ り5枚目のアルバム「The Wild East」がリリースされた。

全体的な雰囲気としては、60 年代の正統派オルガン・ジャズを基盤に、経験豊富なミュージシャンのア グレッシブな即興パフォーマンスをメインとした純粋で勢いのあるジャムバンド的な要素のあるカルテッ トだ。収録曲を見ていくと、60 年代前半のジョン・コルトレーンのモーダルなスピリチュアルを醸し出す クルハマー作「Paris」、「終末」という意味のスウェーデン語タイトル「ドュームダーゲン (Domedagen)」は、ゆったりとした重いテーマが何度も繰り返され、文字通りタイトルのような何か ただ事ならない状況を示唆する感覚が甦っていきフェードアウトして終わる。オルガンのニッケルセン作 でリズムだけはソニー・ロリンズの70 年代カリプソのようなモチーフに中国語のタイトルが付く「Cai Shen Calypso」ではアドリブ時に4ビートのリズム変化を付ける、ギターのストゥボ作「Stratos」はジ ーン・アモンズがジャック・マクダフと作ったアーシーかつグルーヴィーなスタイルやパフォーマンスを 踏襲する。また、1986 年に42 歳で夭逝したノルウェーのジャズギタリスト、ホーヴァル・ストゥボ (Håvard Stubø)の父親、トゥールゲイル・ストゥボ(Thorgeir Stubø)が作曲したという美しいバラー ド「Sol, Litt Regn(晴れ、雨)」も聴ける。実際にライブでは、ハモンドのレスリー・スピーカーから奏 でられる音のうねりを加えたカルテットのサウンドも聞きどころのひとつなのであろう。

メンバーが作曲する6つの作品はいずれも逸品で、モダンなコード進行とややダークで憂いのある雰囲気 をまとった熱い即興とインタープレイが特筆すべき部分だ。また新たに時代を超えて愛聴されていくアル バムがリリースされた。

ホーヴァル・ストゥボ/ Håvard Stubø (g)
ヨーナス・クルハマー/ Jonas Kullhammar (ts)
スタイナー・ニッケルセン/ Steinar Nickelsen (og)
ヨハン・ホルムガード/ Johan Holmegard (ds)

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