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ノルウェーのジャズ・シンガー、ソングライター、作詞家、女優、作家などとして知られているヒルデ・ ルイーズ・アスビョルンセン。2004 年には、スペルマン賞を受賞しているペール・ハスビー(Per Husby)のプロデュースによりデビューアルバム「Eleven Nights and Two Early Mornings」をリリース。 これまで数々の賞を受賞したミュージカルやショーで主演を務め、独自のタッチで新しい作品を生み出し 続けている。2008 年には自己のレーベルSweet Morning Records を設立。以来、プロデューサーとして も長年に渡り関わってきたピアニストで作曲家のアンダーシュ・アールムとデュオで創り上げたのが通算 10 枚目となる「ムーヴィーズ・アンド・ストーリーズ・ライク・ディス」だ。
アスビョルンセンは自身のオーケストラとともに音楽活動を続けながらも、様々な映像から察するにミ ュージカルといったパフォーマーとしての色が濃厚なマルチな才能を持つアーティストでもある。
アルバムでは収録された9曲から、トラッド・ジャズを始め、シャンソン、タンゴ、ワルツ、フォークな ど幅広い音楽性で、往年のキャバレーを彷彿とさせる独特のメランコリックな雰囲気が漂う。それに加え てミュージカル風に聴こえるパフォーマンスは、おそらくオスロ大学で演劇を学んでいることが大いに影 響しているのだろう。またトム・ウェイツをトリビュートしているコンサートからもアメリカン・フォー クのような土着的でロードムービー的な音楽にも精通しているのが聴き取れる。そうした幅広い音楽性の 実現にひと役買っているのが、ピアノの名手アンダーシュ・アールムの存在だ。ノルウェー、スウェーデ ン、フィンランドの音楽院で学び、自身でも5枚のアルバムをリリースし、マッツ・アイラ-トセン (b)、ヤーレ・ベスペシュタ(ds)などノルウェーの著名なミュージシャンと活動してきた。アスビョ ルンセンとは2005 年以来、ピアニストとして関わっているが、息のあった間合い、そこに醸し出される 雰囲気を保つためには、アールム以外には考えられなかったのだろう。シックな装いで自然体でステージ に立つアスビョルンセンと、献身的に寄り添うアールムのピアノを弾く姿が容易に思い浮かぶ、そんな素 敵なラヴソング・アルバムに拍手を送りたい。
ヒルデ・ルイーズ・アスビョルンセン/ Hilde Louise Asbjørnsen (vo)
アンダーシュ・アールム/ Anders Aarum (p)