Movements of Air
Daniel Herskedal ノルウェー
Words by JazzProbe

(image) 左よりエイヨルフ・ダーレ、ダニエル・ハシュケダール、ヘルゲ・ノルバッケン
ノルウェーのチューバ奏者ダニエル・ハシュケダールは、過去10年にわたり金管楽器の中で最も大きいチューバの表現領域を広げ、内省的で映画的な音楽を生み出してきた。5作目となるトリオ最新アルバム『Movements of Air』はピアニストのエイヨルフ・ダーレ、ドラマーのヘルゲ・ノルバッケンと2023年12月、オスロの南西部約30kmのアスケル地区に位置するスタジオでレコーディングされた。またイギリスのレーベル・エディションレコードからの10作目という節目の作品でもある。北欧の自然と精神性を背景にした音楽は初めて彼の作品を聴くリスナーに理想的な入口にもなっている。アルバムの中心テーマは希望や癒し、そしてより良い未来への願いである。ハシュケダールは善悪や戦争と平和といった複雑な対立概念を繊細な音楽表現に昇華させている。
楽曲「The Olive Branch」、「Peace River Crossing」では感情豊かなサウンドスケープが広がり、また「Elements of Harmony」、「Harmonic Allusions」ではハーモニーや音の質感に対する新しいアプローチが試みられている。チューバの重厚で哀愁を帯びながらも柔らかく、ソロとして滅多に聴くことのできない楽器の可能性を大きく示している。全体的に3人のミュージシャンが互いに深く耳を傾けながら即興と構成を織り交ぜ、感情と知性のバランスが取れた演奏を展開。過去の形式にとらわれず、直感と創造性を組み合わせることで静けさの中に躍動を感じさせる音楽を生み出している。細部にまでこだわった音作りと、移ろいゆく音の風景は、聴く者に味わい深い感覚をもたらすハシュケダールは、本作品でさらに一段とチューバという楽器に対する先入観を覆し、芸術性と感情表現を高次元で融合させている。彼のキャリアの中でも特に成熟した本作品は現代音楽における独自の地位をより強固にしたといえるだろう。憂いと希望が共存するその音楽はリスナーの心に響き、詩的かつ革新的な音楽世界を存分に味わえる一枚である。
パーソネル
ダニエル・ハシュケダール(Daniel Herskedal – tuba)
エイヨルフ・ダーレ(Eyolf Dale – p, keys)
ヘルゲ・ノルバッケン(Helge Norbakken – ds)
リンク
Movements of Air
Daniel Herskedal
Movements of Air
Edition Records
2025
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